「きちんと謝れば、許してくださいますよ」


翠蓮がそう笑いかけると、優しく頭を撫でられる。


「美しくなったな、翠蓮」


「ああ、本当に。母上に似てきた」


やけに褒めたたえてくる慧秀兄様は、昔から何かと少し鈍いところがある。


ぼんやりしている訳では無いのだが、栄貴妃の元を辞して、後宮から出るまで、翠蓮が化粧していたことに気づかなかったらしい。


最も女性の変化においての鈍さは祐鳳兄様も同じなのだが、慧秀兄様は何事においても全面的に鈍いという点がある。


例えば、その化粧のことだ。


少しでも人々の印象、記憶されるものが李翠蓮から離れるようにと、そばかすを化粧で表していたのだが、それに化粧ということに気づかなかったふたり。


挙句、化粧を落とした時の二人の反応は似通っており、どうも、翠蓮の今の姿は亡き母に似ているらしいのだ。


美人だと名高かった母に似ていると言われるのは勿論嬉しいが、一応、恋人のいる(犯罪だけど)慧秀兄様の鈍さはこのままでいいのかと、不安になる。