「ねね、私、仕事に戻りたいの!」


「お熱は……あ、下がってますね!」


「でしょう!?」


齢、十二の少女は宮女として後宮に仕えていて、主は泉賢妃だとか。


泉賢妃が毒に倒れた際、共に毒に当たったというのだから、この少女も不憫だった。


「この調子なら、戻ってもいい?」


「熱もないですし、構いませんわ。ただ、無理は禁物ですよ。良いですね?」


「そんなことより、泉賢妃様の容態は……っ!」


翠蓮の忠告を"そんなこと”で片付けた彼女の必死ぶりは、どれだけ、泉賢妃が素晴らしい女人なのかを想像させる。


最も、素晴らしい方だと、治療の最中に翠蓮も思ったのだけれども。


「元気ですよ。あ、いや……元気と言うと、語弊がありますね。今は回復なされて、部屋でゆったりとお過ごしになられてます」


「命には……」


「大丈夫ですよ」


翠蓮がそう微笑んだ瞬間、ボロっと泣き出した女の子。


「っっ、ありがとう……っ!!」


彼女は主の無事を喜びながら、内楽堂の外へとかけていく。


それを見送って、翠蓮は腰に手を当て、広い内楽堂の中を見渡す。


そして、笑顔で。


「皆さんも、早く元気になりますよー!!」


―そう、呼びかけた。