それが、少し前のことだったのなら。


自分は後宮の法に乗っ取って、彼らを罰していたかもしれない。


でも、翠蓮に出逢ってしまったから。


そんなことは出来るはずもなく。


会話していると、栄貴妃は聡い女だという発見ができて、それからというもの、たまに愚痴を吐きに来たり、政治のことについての助言をもらいに来たりするのだ。


家とは違い、庶民の心によりそう精神の持ち主だった栄貴妃は、皇后に相応しい。


でも、その相応しさだけなら、翠蓮も持っているんだ。


それなら自分は……同じ価値ある女なら、翠蓮を妻に迎えたい。


彼女を唯一の妻と呼び、愛したい。


栄貴妃が持っていて、翠蓮が持っていないもの。
それは、身分。


『……お前は、幸せにならないといけないよ』


……二人の身の上が逆だったのなら、と、願った日も少なくない。


けれど、逆だったら逆だったで、自分は翠蓮に興味を抱かない気がする。


抱かずに、交わらずに、お互いに知らずに、生涯は終わっていく。


果たして、今の自分は


翠蓮との出逢いに感謝するべきか、


今の状況を恨むべきか、


自分には答えを出すことは出来ない。