(嵐雪さんにとっての従兄弟が、黎祥からすれば、異母弟妹なのよね……。変な世の中だわ)


つまり、二人には血縁関係もあるってこと。


「俺はそんな難しいことわかんねーけど、元気な人間が増えるのはいい事だと思うぜ。だって、革命のせいで、多くの犠牲者が出たろ?」


「それは、そうですが……」


「犠牲者といえば、異民族への対策はどうなっているのですか。従兄弟殿」


雄星様の嵐雪さんの呼び方に驚きつつも、翠蓮は口を開かず、黙って彼らの動きを見ていた。


「秋遠兄上がお倒れになられている今、あちらは手薄になっているのでは……」


「その件に関しましては、隣国の蒼波国(ソウハコク)と神陽国(シンヨウコク)の協力の元、どうにか固めております。心配なさらなくて大丈夫ですよ、雄星様」


「あの二ヶ国が?我が国に協力したと言うのですか」


「その二カ国との同盟が破綻したのは、先帝陛下の決断によるものでございます。各国の皇族の方々と皇帝陛下とは仲良くなさっておられますよ。……話は元に戻しますが」


疲れているのか、深いため息をついた嵐雪さんは、翠蓮を真っ直ぐに見て。


「後宮内の内楽堂でも、この国のために力を尽くしてくれるのは大変、構いません。逆に感謝を述べたい」


「……」


「けれど、」


何を言われるかは、だいたい想像ついていた。


「そうなってしまうと、何か起こってしまった時に私は庇って差し上げられなくなる」


「……」


その通りなのだ。


この後宮の関係を見ていれば、一目瞭然。


今まで、翠蓮は皇宮にほど近い後宮内で、行動していた。


しかし、内楽堂は後宮内の最深部。


嵐雪さんでさえ、踏み込むことが難しいそこは皇帝陛下と宦官しか近づける場所ではなく、何かあったら、嵐雪さんは翠蓮を庇えない。


深いところまで知った翠蓮が、嵐雪さんの後押しだけでこの地に居座っている翠蓮が、何を企んでいるかなんて……捏造でも、どうにでもなるから。


もし、適当な罪を被せられた時、後宮の奥まで踏み入っていたら、翠蓮は逃れられなくなるのだ。


何かあったら、間違いなく、文字通り、翠蓮の首は飛ぶ。