「ええ。そうよ」
翠蓮の頷きに、
「琳(リン)、たいへん!」
と、男の子は言う。
「叡(エイ)は元気だけどね、えっとね、んと、琳があちちなの」
「あちち……熱?」
こくこくと頷かれて……というより、この子はどこの子なんだろう。
「きて!」
小さい手が、必死に翠蓮を引っ張る。
翠蓮はその子を抱き抱えて。
「どこ?走った方が早いわ」
微笑みかけると、
「あっち!」
指さした、小さな宮。
碧寿宮のひとつなのか、それとも、違うのかはわからないけれど……とりあえず、豪勢な宮ではなくて。
こじんまりとした、小さな古びた宮。
「ここ?」
「うん、」
「入っていいの?」
男の子が頷くので、少し古びた重い扉を押す。
そこに居たのは、三人の女の子。
質素な服を着ているけれど、美貌は隠せず。
その美貌をどこかで見たことがあると思い、近づく。
「ど、どちら様ですか……?」
成人したかどうかくらいの女の子は翠蓮に怯えながら、尋ねてきて。
「薬師です。この子から、来て欲しいと言われたのだけど……」
「叡季(エイキ)!?どこに行ったのかと思えば……勝手に出歩いちゃ、ダメじゃない!」
手を伸ばしてきた彼女に、男の子を託す。