「渓和王とは……」


翠蓮が尋ねると、栄貴妃様が


「そうね。翠玉は知らないわね」


と、手招いてくれる。


傍によると、


「渓和王はね、陛下の異母弟で……渓和を治めていらっしゃるの。淑秋遠様と仰って、陛下と仲の良い方よ」


と、教えてくれた。


「……お倒れになられた今の状況、お分かりになられますか」


宮正司に目を向ける。


黎祥の大切な人なら、尚更、死んでもらう訳にはいかない。


「高熱が続いており、全身の痛みを訴えております。目もよく見えていないらしく、かなりの重篤かと」


「言葉は交わせましたか?」


「いえ……時々、吐血致します。陛下が遣わされた医者でさえ、難航している状況なので……」


高熱、全身痛、視力低下、吐血……ああ、やはり。


「私が今、見ている二人の毒味ですが……二人の毒は毒草の中では有名なもので、けれど、決して軽い毒ではありません。恐らく、送られてきた菓子には致死量が盛られていたのでしょう。二人は未だ、褥から起き上がることは不可能ですし、油断すれば、命に危険がありますが……それでも、先が見えています」


「その件については、こちらが解決致しました。栄家に恨みを持つものの犯行であったのですが、その件と此度のことに関係があるというのですか?」


「いいえ。事件の詳細を、私は知りませんから。言えることといえば、今回の毒は幻芳珠(ゲンホウジュ)と呼ばれる、大変希少なものであるということだけです」


「幻芳珠?」


栄貴妃が、首を傾げる。