王太子殿下の花嫁なんてお断りです！

「ああ、本当に良かったわ。もてなしの席にオリヴィア嬢がいると思うだけで心が強いんだもの。ああ、本当に本当に良かった。これでおもてなしも乗り切れそうよ」


嬉しそうなディアナは、けれどオリヴィアを見つめると眉を下げて憂うような表情に変わった。


「ただ、貴女にとってはとっても骨が折れるのかもしれないわね」


それはメリーアン王女への対応のことだと、言われなくてもオリヴィアには分かった。


「かなり、大変なのでしょうか？」

「そうね。一筋縄ではいかないと思うわ。とっても大変な一日になるでしょうね」


はっきりとしたディアナの言葉にオリヴィアの心はずんと重くなる。

ディアナは嫁いだ先の城で毎日のようにメリーアンに会っているのだ。いわば身内がはっきりと大変だと言っているのだ。

やはり噂の通り、メリーアン王女という人物はとても関わることが難しい相手らしい。

そんな相手をどんな風にもてなせと言うのだろう。どうやって喜ばせろと言うのだろう。

オリヴィアはアーノルドを恨めしく思った。

やはり今すぐにでも婚約破棄をしてしまいたい。

そう思うオリヴィアに、ディアナは「けれど」とあたたかく言葉をかけた。


「貴女ならきっとあのお姫様をもてなすことはできると思うわ」

「え…？」


暖かい眼差しを向けられたオリヴィアだが、けれどどうしてそんな風に言い切れるのか分からなかった。

不思議そうな顔をするオリヴィアに柔らかくディアナは微笑みかける。


「だって貴女はアーノルドが選んだ女性ですもの。あの子は王太子としての技量もそうだけれど、何よりも人を見る眼は確かよ」


とは言われても、アーノルドは半分遊びで、そして脅す形でオリヴィアのことを婚約者に仕立て上げたのだ。

そんな人物に人を見る眼があると言われても信用できない。


「大丈夫。貴女ならきっと大丈夫よ。アーノルドだけじゃない。私だってそう思えるもの」