王太子殿下の花嫁なんてお断りです!

「本当にお前は性格が悪いな」

「いえいえ、アーノルド様には敵いませんよ」


ユアンの面白がる様子に辟易した様子でアーノルドは溜息を吐き出した。

そんなアーノルドを見ても、ユアンは笑顔を浮かべたままだ。決して恐れたり怖がったりする様子がまるでない。

可笑しな主従だと思う一方で、オリヴィアには気になることがあった。


「アーノルド様、私を探してくださったのですか?」


王太子殿下ともあろう人物が、王女を交えた茶会の直前に城を飛び出した伯爵令嬢をおいかけるなどあるだろうか。

城下町とはいえ、城を抜け出せばそれなりに命の危険が付きまとうというのに、そんな危険を冒してまで令嬢のたった一人を探し出そうとするなど、オリヴィアにはとても信じられることではなかった。

オリヴィアに問われたアーノルドは居心地の悪そうな顔をして少し顔を背けたが、再びオリヴィアに顔を向けると覚悟を決めたように話した。


「お前は俺の婚約者だと城中に伝わっている。もうどこに伝わっていても不思議ではない。そうなればお前の危険は比ではなくなる」


だからこそオリヴィアを守るのは当然だと言う。


「お前のことが大事だからな」


射るように目を見つめられてしまうと、オリヴィアはその視線から逸らせなくなってしまう。

まるで本当にオリヴィアが恋しいと言われているような気持ちになってしまう。

アーノルドの本心など分かりようがないのに。

心拍が速くなる中、オリヴィアは必死に目をそらして言った。


「裏の顔をバラされたら困るからですか」


するとアーノルドは鼻で笑った。


「……それも、ひとつの理由ではあるな」


やっぱり。オリヴィアがこっそり溜め息を吐き出すと、ユアンはアーノルドに言った。


「では、オリヴィア様が無事に戻られたことをディアナ殿下にお伝えして参ります」