「心配かけてごめんなさいね、メイ。でも私は大丈夫よ。父上からも何もひどいことは言われてなどいないわ」

メイは泣き出すとなかなか泣き止まない。

けれどこんな風にオリヴィアのためだけに泣いてくれるのはメイだけだ。

こんなにも愛してくれる侍女に出会えてオリヴィアは幸せだと思いながら、穏やかな声で「大丈夫よ」と繰り返す。


「ほ、本当にございますか…?」


「ええ、もちろん。

王太子殿下が私を婚約者だと宣言して、父上にもそのように伝えられて、それから帰還されたディアナ殿下の出迎えをして、これからディアナ殿下と王太子殿下と共にお茶をすることになったけれど、きっと大丈夫よ」


温度のない声で一息に言いあげてしまうと、メイの涙は乾いていた。

驚きのあまり、目を見開いてぽかんと口を開け、固まってしまったのだった。