王太子殿下の花嫁なんてお断りです!

「アーノルド様、そのように明るく振る舞えるのも今だけですわ。この先きっと後悔なさるでしょう。こんな田舎の娘を娶るなど、気が触れたかと家臣の方々も噂なさるに違いありませんわ」


不適の笑みを浮かべてオリヴィアが皮肉を言えば、アーノルドは妖艶な余裕たっぷりの笑顔を浮かべて微笑みかえす。


「俺の家臣だ、そのような振る舞いは俺がさせない。誰に何とか思われようが、お前が王太子妃に相応しいことを証明するだけだ。くだらん心配はしなくていい」


アーノルドはオリヴィアの言葉を皮肉だと分かっているのかいないのか、冗談なのか否か判断がつかないような言葉を紡いでいくので、オリヴィアは反応に困る。

さて何と答えればよいのかと思っていると、後ろから声が飛んできた。


「何をなさっているのです、殿下。こんな回廊のど真ん中で」


ため息交じりの呆れ声は、ユアンのものだった。


「ユアン様!」

「こんにちは、オリヴィア様」


オリヴィアを視界にとらえたユアンは朗らかな笑みを浮かべる。微かにアーノルドが舌打ちをしたような気もしたが、オリヴィアは気に留めなかった。


「何の用だ、ユアン」

「アーノルド様こそ、いくらオリヴィア様がお気に入りだからとはいえ、こんな人目に付きやすい場所で裏の顔を晒さないでくださいよ。他の者に見られたらどうなさるのですか」


ユアンの正論に何も言えないのか、アーノルドは「うるさい」とそっぽを向くだけだった。


「それで、用があるならさっさと言え。ないならとっとと失せろ」


苛立つようなアーノルドの言葉にユアンは大きく溜息を吐き出して「腹が立っているときの態度はいくつになっても変わらない」と小さな声でつぶやくと顔を上げた。


「急ぎアーノルド様にお伝えしたいことがございます。

ディアナ様が城にお見えになるそうです」


ディアナという名を聞いて、アーノルドは目を見開いた。