オリヴィアに手紙を渡した伯爵は、用事は済んだといわんばかりに早々に本邸を後にした。
しかし伯爵はもうとっくに本邸を後にしたというのに、伯爵の書斎から戻らないオリヴィアを心配したメイが様子を見に来ると、残されたオリヴィアがその場に佇んでいた。手には渡された手紙を握りしめたままだ。
「お、お嬢様?」
オリヴィアは何か独り言を呟いているらしかった。
メイが耳を澄ましていると、それは普段は伯爵令嬢然と振る舞っているオリヴィアの言葉とはとてもかけ離れた口調だった。
「…はあ? 王太子殿下とお見合い?
この私が?
…巫山戯ないで。冗談じゃないわ」
冗談じゃない、と呟くオリヴィアはどこか呆れているようであった。吐き捨てるようでもあったし、どこか自嘲的でもある。
なんだか様子がおかしい。不審に思ったメイは再度近づいて声をかける。
「お、お嬢様? どうなさいました?」
「冗談じゃない。
絶対嫌よ、嫌!
断固、お断り申し上げるわ!」
拳を握りしめてオリヴィアは立ち上がる。その目は怒りに満ちていた。
伯爵令嬢たというのにも関わらずこんなにも感情を剥き出しにするオリヴィアにメイは戸惑ってしまった。
「お、落ち着きなさってください、お嬢様! し、深呼吸です、深呼吸!」
相変わらず少しずれた反応をするメイにオリヴィアは大きく息を吐き出して、それからふっと目を細める。
「…ねえ、メイ」
「はっ、はい!」
主に名前を呼ばれたメイは驚きのあまり声を裏返しながらなんとか返事をした。
「結婚相手が王太子殿下、なんて、まるでこの世の終わりみたいね」
しかし伯爵はもうとっくに本邸を後にしたというのに、伯爵の書斎から戻らないオリヴィアを心配したメイが様子を見に来ると、残されたオリヴィアがその場に佇んでいた。手には渡された手紙を握りしめたままだ。
「お、お嬢様?」
オリヴィアは何か独り言を呟いているらしかった。
メイが耳を澄ましていると、それは普段は伯爵令嬢然と振る舞っているオリヴィアの言葉とはとてもかけ離れた口調だった。
「…はあ? 王太子殿下とお見合い?
この私が?
…巫山戯ないで。冗談じゃないわ」
冗談じゃない、と呟くオリヴィアはどこか呆れているようであった。吐き捨てるようでもあったし、どこか自嘲的でもある。
なんだか様子がおかしい。不審に思ったメイは再度近づいて声をかける。
「お、お嬢様? どうなさいました?」
「冗談じゃない。
絶対嫌よ、嫌!
断固、お断り申し上げるわ!」
拳を握りしめてオリヴィアは立ち上がる。その目は怒りに満ちていた。
伯爵令嬢たというのにも関わらずこんなにも感情を剥き出しにするオリヴィアにメイは戸惑ってしまった。
「お、落ち着きなさってください、お嬢様! し、深呼吸です、深呼吸!」
相変わらず少しずれた反応をするメイにオリヴィアは大きく息を吐き出して、それからふっと目を細める。
「…ねえ、メイ」
「はっ、はい!」
主に名前を呼ばれたメイは驚きのあまり声を裏返しながらなんとか返事をした。
「結婚相手が王太子殿下、なんて、まるでこの世の終わりみたいね」



