王太子殿下の花嫁なんてお断りです!

その原因を作ったのは王太子自身だというのに。オリヴィアを罰するという理由で留まらせているのは、他でもない王太子だ。そう思うと呆れて溜め息しか出てこない。


「ならば婚約者だなんて面倒なことをせずとも、無理矢理にでも私を妃にしてしまえばよかったではないですか」


お前が欲しい、と言われたあの言葉を思い出す。

あの言葉はきっと嘘でも冗談でもなかったはず。もし、万が一にもオリヴィアを妃にしたいという気持ちがアーノルドにあるのなら、有無を言わさずそうしてしまえば簡単だっただろう。王太子という身分があるのならそんなこと、造作もないことだろうに。

それなのになぜその行動をとらなかったのだろうかと疑問で仕方がなかった。

しかしアーノルドは「なぜ分からない?」と逆に問うた。


「そんな簡単な方法でお前を手に入れたって、つまらないだろう?

俺はお前の心ごとお前が欲しいんだ。お前にその気持ちがないのに無理やり妃にしたところで空しいだけだ」


心ごとお前がほしい、だなんてそんなことを言われたらどうやって返答すればいいのだろう。

それに、どうしてこんな言葉を恥ずかしがりもせずに真っ直ぐにぶつけてくるのだろうか。アーノルドの思考回路を疑問に思ってしまうし、何より聞いているこっちが恥ずかしい。

思わず黙ってしまったオリヴィアに、アーノルドは一つ溜息を吐き出した。


「とにかく、そういうことだ。話を合わせろ。もししくじったら、その時は領地は取り上げる。分かったら、行くぞ」