王太子殿下の花嫁なんてお断りです！

何度言ったら伝わるのだろう。いや、伝わるはずもないとオリヴィアは半分諦めていた。貴族の父親には娘を嫁がせること以外に考えはないのだろう。

しかしながら今日の伯爵は違った。


「ああ、そうだろうな。お前ならそう言うと思って、その子息との話は断ってきた」


オリヴィアは目を丸くした。まさかあの父がこんなことを言いだす日が来るなんて夢にも思わなかったのだ。

ようやく娘の気持ちを尊重する気になったのだろうかと淡い期待を抱くオリヴィアだが、すぐにそれは打ち砕かれることになる。


「これを、お前に。そのために私は戻って来たのだ」


伯爵は胸元から手紙を取り出した。白い上質な紙で作られたその封筒には、赤い封蝋が押されている。

受け取り手紙を読んだオリヴィアは目を見開く。それはとても信じられる内容ではなかった。夢だと言われた方がまだ納得できる。


「これは、本当ですか？」


「ああ。

お前は王太子殿下の妃になる」