メイには待っていてくれる家族がいる。
それに対して私にはない。アーノルドもディアナも、ユアンも、私ではない「婚約者」が現れればそれでいい。私の代わりはいくらでもいる。
どうせ替えが効く存在ならば、せめて最後くらい役に立って終わらせて欲しい。
メイは泣いていた。
涙を零し、嗚咽を漏らしながら泣いていた。
それから剣を大きく振り上げた。
ああ、これでもう本当に終わりだ。
そう思って目を閉じたその時だった。
キン、と金属音と共に鋭い風が頬を掠めた。
目を開けると、メイが振り下ろしたはずの剣を受けとめるように、オリヴィアを守るように、アーノルドが剣を受けとめていた。
それからアーノルドはメイの剣を弾き飛ばすと溜め息を吐き出した。
「間に合った」
肩を上下させて呼吸し、余裕のない表情にオリヴィアは目を丸くした。
「アーノルド様、どうして……」
「まあ、お前はアンスリナにいるだろうと思ったけど。まさか弟王がこんな風に荒れ狂ってるとは、身内に聞くまで知らなかったよ」
それからリアムを見て「どうも、リアム殿」と軽く挨拶をする。
「やあ、アーノルド殿下。それで、どうして君がこんなところに」
「そりゃあ、うちの婚約者が巻き込まれたって知ったら否が応でも来るでしょう。おまけにうちの国の罪もない民が殺されそうになっているなら、王太子としても助けに行かなくちゃ」
それを聞いたリアムは立ち上がり「でも手紙で言ったじゃないか!」と大声を上げた。
「国に仇成す反逆者がいるなら、その者には速やかなる死をって。反逆者ってその娘と父親、ダルトン親子のことだよ?」
「確かに反逆者がいるならと言ったけど、実際は彼らじゃなかった。お前なんだろう、リアム。事情は全て姉上から聞いている」
それまで穏やかだったアーノルドの表情が急に鋭くなった。
「王太子の立場が耐えられなくってクーデター起こそうとしてるんだって? 国を支えるべき存在がクーデター起こそうなんて何考えてんの。それも隣の国を巻き込んで」
痛いところを突かれたリアムはけれど負けずに言った。
それに対して私にはない。アーノルドもディアナも、ユアンも、私ではない「婚約者」が現れればそれでいい。私の代わりはいくらでもいる。
どうせ替えが効く存在ならば、せめて最後くらい役に立って終わらせて欲しい。
メイは泣いていた。
涙を零し、嗚咽を漏らしながら泣いていた。
それから剣を大きく振り上げた。
ああ、これでもう本当に終わりだ。
そう思って目を閉じたその時だった。
キン、と金属音と共に鋭い風が頬を掠めた。
目を開けると、メイが振り下ろしたはずの剣を受けとめるように、オリヴィアを守るように、アーノルドが剣を受けとめていた。
それからアーノルドはメイの剣を弾き飛ばすと溜め息を吐き出した。
「間に合った」
肩を上下させて呼吸し、余裕のない表情にオリヴィアは目を丸くした。
「アーノルド様、どうして……」
「まあ、お前はアンスリナにいるだろうと思ったけど。まさか弟王がこんな風に荒れ狂ってるとは、身内に聞くまで知らなかったよ」
それからリアムを見て「どうも、リアム殿」と軽く挨拶をする。
「やあ、アーノルド殿下。それで、どうして君がこんなところに」
「そりゃあ、うちの婚約者が巻き込まれたって知ったら否が応でも来るでしょう。おまけにうちの国の罪もない民が殺されそうになっているなら、王太子としても助けに行かなくちゃ」
それを聞いたリアムは立ち上がり「でも手紙で言ったじゃないか!」と大声を上げた。
「国に仇成す反逆者がいるなら、その者には速やかなる死をって。反逆者ってその娘と父親、ダルトン親子のことだよ?」
「確かに反逆者がいるならと言ったけど、実際は彼らじゃなかった。お前なんだろう、リアム。事情は全て姉上から聞いている」
それまで穏やかだったアーノルドの表情が急に鋭くなった。
「王太子の立場が耐えられなくってクーデター起こそうとしてるんだって? 国を支えるべき存在がクーデター起こそうなんて何考えてんの。それも隣の国を巻き込んで」
痛いところを突かれたリアムはけれど負けずに言った。



