王太子殿下の花嫁なんてお断りです!

「へえ、君は思いの外毒舌なんだね。まあいいけど。僕は暇じゃないよ。今日は隣国から、君の国から客人を迎えるからね」

「客人?」


するとリアムは突然「そうだった、思い出した」と言ってにっこり笑顔でこんなことを言った。


「悪いけど、君には今日死んでもらうよ」


オリヴィアは目を見開いた。


「は?」

「死ぬというか、処刑かな。君は自分の領地に火を付け、領地を混乱させ、そうして西の国の兵を招き入れ、そうした国を裏切った反逆者として君の国の王に裁かれて死ぬんだ」

「なっ、なんでそんなこと!」

「君、アーノルド王太子殿下の婚約者なんだって? そんな地位を持っていたなんてつい最近まで知らなかったんだよ。大丈夫。君がいなくなったらその後には僕の妹メリーアンを据えるから。君がいなくなっても何も困らないようにしてあげるからさ」

「冗談じゃない!」

「君の国からはもう反逆者を裁くための人材を送ると王太子殿下から直々にお手紙を頂いている。君の王太子殿下は返事が早いね。反逆者には早急な死を、だってさ。なかなか過激だよね。

僕は君のお父さんと領地売買の最終的な話し合いがあるから先に失礼するよ。後は頼んだ」

頼んだと言われたメイは頭を下げた。


「メイ!」

「私はシュカだ。間違えるな」

「間違えてなどいないわ! あなたの名前はメイよ! メイ、あなたは私の侍女で、一番信頼を置いていて……」


そこまで言うとメイは突然大声で笑い出した。お腹を抱えている。


「信頼を置いていた? そんな使用人にまんまと裏切られているんだからあんたは馬鹿だって言ってるんだよ」


罵倒する言葉を言い残して、メイはまた立ち去ろうとする。


「いいこと教えてあげるよ。あんたの処刑は私が執行する。その後、領地売買の契約を済ませた後、ダルトン伯爵も殺す。ダルトン伯爵家はもう終わるんだ」


高笑いをすると、ふっと突然オリヴィアを見つめて自嘲するような表情を浮かべていった。


「恨むなら散々恨めばいい。未来はかわらない」


それだけ言うと「お喋りはお終いだ」と言って牢の扉を開けた。


「お前はこれから処刑される。王宮からも反逆者には速やかな死をと言われている。掬いは何処にもないんだよ」