王太子殿下の花嫁なんてお断りです!

アーノルドはきっと、オリヴィアが自身の弱みを知ってしまったためにある種の口封じとして娶ることにしたのだろう。

それにアーノルドは基本的に恋愛に興味が無いのだろう。もし興味があるのならもっと早く相手を作っていたはずだ。

つまりアーノルドは決してオリヴィアに対して恋愛感情を抱いているわけではないのだとオリヴィアは確信していた。

そう思うとオリヴィアの胸が痛む。一体なぜ痛み出すのかオリヴィアには分からなかった。

その理由を考えようとしたときには、メリーアンが微笑みを浮かべながら怒っていたのだ。


「あなた、とても殿下に好かれているのね。側室としても、あなたに殿下は勿体ないわ。片田舎の娘なんて、不釣り合いよ。ここに居るのも目障りね。さっさと消えてちょうだい」


アーノルドから好かれてなどいないと思いながら、オリヴィアは考えていた。

アーノルドは確か言っていた。今回の接待でオリヴィアが客人であるメリーアンを喜ばせるようにと。

その真意をオリヴィアはずっと考えていた。あの腹黒いアーノルドのことだ、ただ言葉通りの指令だけではないのだろう。

ただ、今になってようやく分かった。

一見すると簡単そうにも思えるこの命令の真意は、オリヴィアの存在をメリーアンに認めさせろということ、そして、メリーアンよりオリヴィアが婚約者として相応しいことを周りの者に認めさせろということだ。


このことに気付いたオリヴィアはにやりと口の端を僅かに上げた。


「私がこの場から消えるかどうか、それをお決めになるのは殿下です、王女。私は殿下からここに留まるよう申しつけられておりますゆえ、殿下の命がない限りここを動くことはできません」


少し挑発的なオリヴィアの返答に、思惑通り苛立ったメリーアンは顔を真っ赤にした。


「分からないの? あなたがここにいることが殿下にとって一番の面汚しなのよ!今すぐ消えて!」