王太子殿下の花嫁なんてお断りです!

一口含む度に毒がないことを確認しながら食べ勧める。そうしてデザートまで食べたが、確かにメリーアンの言うとおり、毒は含まれてはいなかった。

ほっと胸をなで下ろすオリヴィアに、メリーアンは笑った。


「オリヴィア様は華奢なのに沢山召し上がるのですね」


とは言え隣国の王女が用意したという朝食だ、食べられない量としても食べるしかないだろう。

心の中でオリヴィアはそう思うのだが、笑顔を取り繕って「どれも美味しかったものですから」と答える。


「こんなにも豪華な朝食は初めてです。ありがとうございます」


メリーアンは目を細めたまま「そう、良かった」と答えたが、少しだけ目を細くしてこう続けた。


「この程度の朝食が初めてだなんて、流石は田舎者。いい思いができて良かったわね」


いつになく乱暴な口調と、敵視する鋭い目。そして微笑んでいたはずの表情は、憎しみの表情に変わった。


「王、女? どうなさいましたか?」


一応は問いかけてみるけれど、メリーアンは「何が?」と言うだけだった。


「あ、いえ、その、先ほどまでと表情が少し違っているように見えるものですから」

「伯爵令嬢のあなたに笑顔なんて必要なくて?」


何とか言葉を選ぶオリヴィアだったが、メリーアンは止まらない。まるで親の敵と言わんばかりに鋭く憎しみの籠もった表情を浮かべている。


「気に入らないのよ、あなたが」


それはオリヴィアも初めて会ったときから、否、出会う前から分かっていた。

想い続けた人の婚約者というだけでも憎いのに、自分よりも地位の低い田舎出身の伯爵令嬢だなんて、やるせない気持ちが募る一方だろう。

それが分かっているオリヴィアは今メリーアンに何と言ったら良いのか分からず口を閉ざしていた。


「アンスリナなんて田舎で、作物も育たない辺境の土地で、そんな令嬢を娶るなんて。殿下は一体何をお考えなのかしら」