王太子殿下の花嫁なんてお断りです!

余計なことは何も言うなと言わんばかりのアーノルドの言動に、オリヴィアは「いえ、何も」と押し黙る他なかった。

なんて性格の悪い人だろう。オリヴィアは何も言わないかわりに軽蔑の目を向ける。


しかしアーノルドは「そう? それならいいのだけど」などと白を切る。

冗談じゃないとオリヴィアは思った。

こんな人と一緒にいることなど嫌でたまらない。婚約などもってのほかだ。必ず婚約を破棄して、その上で必ずアーノルド王太子殿下の本当の人柄を、この性格の悪さを、国中の民に晒してやる。

オリヴィアが固く決意していると、「アーノルド殿下」とメリーアンがアーノルドを呼びかけた。


「そちらにいる女性は何方ですの?」


メリーアンは穏やかな表情を浮かべているがその声だけは鋭さを増していることにオリヴィアは気付いていた。

彼女がオリヴィアに対して初対面である今この瞬間から敵対心を抱いていることが、オリヴィアにもひしひしと伝わってくる。

名前すら伝えていないこの状態で敵対心を持たれてしまっては、婚約者だと知られた時にはどんなことになるのだろうか。

オリヴィアが途方に暮れそうになっていると、アーノルドは困ったように眉を下げながら言った。


「それよりも、姉上に挨拶をしてくれないかな? こうして隣にいるのだから」


その言葉でメリーアンははっと表情を元に戻し、ディアナに顔を向ける。

ディアナは少し呆れながらも美しい表情を浮かべたままで「貴方は本当にアーノルド殿下がお好きなのね」と言った。


「ディアナ様。ええ、私はアーノルド殿下のことをずっとお慕い申し上げていますから」


その瞬間、場の空気は凍った。