王太子殿下の花嫁なんてお断りです!

「申し訳ありません。少々仕事が長引いていたもので」


表情をあまり変えないアーノルドに、ディアナは面白いと言わんばかりに「ふうん」と疑いの目を向ける。


「それは貴方が意図的に長引かせたのではなくって?」

「まさか。僕はどんな客人にも礼を失するようなことはしませんよ」

「さあ、どうかしら」


疑惑を向けられたアーノルドだが、それ以上否定の言葉を発っしなかった。

それは突然鐘が高らかに鳴ったからだった。

鳴り響く音を合図に衛兵達は一斉に敬礼をする。

談笑をしていたディアナとアーノルドも王族然とした気高く品のある姿勢で客人を出迎える姿勢を取る。

オリヴィアの緊張は一段と強まった。


そして遠くから馬車が見えると、衛兵の一人が声高に来客を告げた。


「西の国は王女、メリーアン様!」


そして馬車は城内へと続く赤い絨毯のところまで来るとぴたりと止まった。

そして馬借が馬から下りると、馬車の扉を開く。

こつりとヒールの音を響かせてゆったりとした動作で姿を現したのはまるでダリアのような華やかさを身に纏った女性だった。

白い肌、紅色の唇、品の良さと華麗さのある煌びやかなドレス。大きな瞳と余裕のある表情からは自信さえ感じられる。

オリヴィアの全身に緊張が走った。


「ご機嫌よう、アーノルド殿下」


彼女は唇の端を上げて美しく微笑む。


「久しいね、メリーアン王女」


メリーアンに微笑み返すアーノルドはひどく穏やかな表情をしている。

爽やかさの漂っている、どこからどう見ても完璧な微笑みにメリーアンはうっとりとした表情を浮かべているが、オリヴィアだけは違った。

なんて胡散臭い笑みだろうかと思えてならない。

オリヴィアはじとりとアーノルドを横目で見るとこっそり溜め息を吐き出した。

しかしそれを見逃さなかったアーノルドに足を踏まれた。

驚いて顔を上げると、アーノルドは表情だけは微笑みを絶やさず視線だけを鋭くしてオリヴィアを見つめていた。


「ん? どうしたんだい?」