職員室を離れながら、わたしたちは並んで歩く。



「雪乃は朝から職員室で何してたの?」

「呼び出し」

「どんな悪事を働いたの!」

「違うって。いい加減、進路決めろってうるさいの」

「あー。そういえば私も言われてたわ」



 あからさまに嫌な顔をする夏海。
 どうやら呼び出されてはいたけれど、無視していたらしい。生徒会長特権ね。


 まあ、モジャからは逃げられないと思うけど。



「夏海は決まってるの? 進路」

「私が? 決まってるように見える?」

「受験が嫌って顔してる」



 夏海は成績悪いわけじゃないし生徒会長をやってるんだから、受験なんてあっという間に終わりそうだけどね。


 サバサバしてる割には心配性なんだから。そういうところが可愛くてモテるんだろうな。



「どうしたの? 雪乃」

「え?」

「いつもぼんやりしてるけど、今日はまた一段とすごい」

「そう?」



 あ。ちょっと心配かけちゃったかな。


 いけない、いけない。
 今は、あの人のことを忘れなきゃ。受験生なんだから、恋をしている場合じゃない。