「ひっ、許して‼」

明石さんに、怯えた伊織先輩。
さっきの勢いは消え、恐怖で固まる伊織先輩。

「す、すいません‼」

ただ、ただ震え……彼は一目散に逃げた。
取り残された私と、明石さん。

明石さんが、私を見つめた。
ハッ、として気づいて、胸元を隠す私…。

だけど彼が近づく度に、震えが起こる。

怖がっちゃダメ。
彼は、伊織先輩とは違う。
助けてくれた人なのに、"怖い"なんて思っちゃいけないのにーーー。

カツン。カツン。

君が近づく足音さえ、怖い。
自然と震える体に、掛けられた黒いスーツ。

えっーーーー?


「大丈夫だった?

零のお嬢様だよね」


君は優しく、微笑んだ。