「桐島くんがどうしたの?」
「うーんとね」と、セイコは言いづらそうな表情をしている。私は急かすことなく、じっとこと言葉の続きを待つことにした。
空気中にホコリが舞う音楽室では、セイコの香水の匂いがいつも以上に漂っている。
セイコはベルガモットの香り、なんて以前言っていたけれど、私はベルガモットがなんなのかよく分かっていない。
フルーティな香りで私は嫌いではないけれど、ことあるごとに身体につける香水をエリカは毛嫌いしている。香水のような強い匂いのものを嗅ぐと、くしゃみが止まらなくなるそうだ。
一種のアレルギーだと本人は言っていたけれど、『少し付ける量を減らしてほしい』とエリカが頼んでもセイコは『だったらマスクをすればいいでしょ』と、嫌な顔をするだけ。
チエミとアヤと同じように、セイコとエリカもまた個人的には合わないふたりだ。
私がそんなことを考えている間にセイコの決意が固まったようで、やっと重たい口を開いてくれた。
「私、実は桐島くんと連絡取ってるんだよね」
「ええ!?」
予想外の言葉に、つい声が大きくなってしまった。



