――桐島くん。




私はため息をつきながら、ガチャリと家のドアを開けた。

高校入学とともにひとり暮らしをはじめて、最初はなにもかもが大変だったけれど、今は炊事洗濯もそれなりにできるようになった。

リビングのソファーに腰かけて、私はまずテーブルの上に置かれたスマホをチェックする。電源をつけた途端に、ひっきりなしに色々な人からの連絡が届く。

私はそれらの着信やメッセージを全部無視して、ギャラリーに保存されている写真を指でスクロールさせた。


……ジャラ……。

と、その時。部屋に金属音が響いた。

床にうずくまっていた身体が動くとむくっと起きて、その首には銀色の鎖。

ひとり暮らしをはじめたら絶対に飼いたいと思っていた犬。ペットがオッケーのマンションを選び、壁は防音になっているので鳴き声も隣には聞こえない。


「ワン」

まるで、おかえりと言っているかのような円らな瞳。私は〝彼のスマホ〟を触りながら、問いかけた。


「ねえ、聞いて。アヤはやっぱり引っ越すことになっちゃったよ。連絡先も変えたみたいだし、最後のお別れも言えなかった」

「ワン」

「セイコもまだ回復しないし、エリカなんて空気みたいに生活してる。みんな桐島くんを好きになるからだよね」

そう言ってスマホを片手に私はソファーから立ち上がった。