――桐島くん。



工場の奥へと行くほどに光がどんどん届かなくなり、スマホのライトを使わなければ足元が見えないほどだった。

この廊下は一体どこまで続いてるんだろう。本当に出口のないトンネルにいるみたい。

チエミの名前を一定の間隔で呼んでいるけれど、犯人も呼び寄せてしまうかもしれないし、こんな場所で襲われたら逃げることさえできない。


「大丈夫?」

私はアヤに声をかけた。

アヤも私と同じようにスマホのライトで辺りを照らしている。と、その時。私はあることに気づた。


「あれ、ストラップなくない?」

桐島くんとおそろいだと言っていたマスコットがなくなっていた。


「え、うそ、やだ、本当だ」

アヤはライトを頼りに周りを見渡すけれど、足元にはストラップらしきものは落ちていない。


「……もしかしてさっきいじったことに取れちゃったのかも」

アヤがスマホのライトの付け方が分からないと言って、たしかに慌てて色々なところを触っていた。

結局、私がライトを付けてあげたけれど、あの時ストラップがしっかり付いていたかどうかは定かではない。


「わ、私、戻って探してくる!」

「待って。今はチエミを探そう。合流したあとでストラップは……」

「嫌っ。あれは桐島くんとの思い出のものなの。私にとってなにより大切なものなの……っ」

アヤはそう言って、早歩きで来た道を戻っていく。


「ま、待って、アヤ……」と、追いかけようとしたけれど、壁に剥き出しのまま刺さっていた釘にスカートが引っ掛かってしまった。

ライトを当ててなんとか取ることができたけど、顔を上げる頃にはすでにアヤの姿は暗闇の中に消えたあとだった。