――桐島くん。



施錠されていないドアは簡単に開いた。 

建物内の空気はどんよりとしていて、カビ臭さの中にはやっぱり鼻をツンとするような薬品の匂いもする。


「で、出てきて!言われたとおり来たわよ!!」

声が反響するぐらいアヤは大きく呼びかけた。

だけど犯人らしき人は姿を現さない。アヤは不安になりもう一度、指定場所が書かれたメールを確認する。これもイタズラだったのだろうかと、諦めていると……。


「あっ!」

突然、チエミが慌てたように声を出した。


「い、今あそこに人が……」

そう言ってチエミは重機などが置かれている前方を指さした。


「一瞬だったけど、誰かが私たちのことを見ていた気がする……」

チエミの言葉に、私とアヤの背筋が凍る。


……やっぱりいる、犯人が、確実に。


覚悟を決めたはずなのに足がすくんで動けない。そんな私たちを見かねたチエミの身体がゆっくりと前に進む。


「私が見てくるよ」

「え、あ、危ないよっ」

「大丈夫。私にはバスケ部で鍛えた脚力があるし、もしもの時は窓を突き破ってでも逃げるからさ」

私たちを安心させるようにチエミが微笑むと、そのまま犯人を追いかけるようにして走っていってしまった。


……それからどのくらい時間が経っただろう。

おそらく、5分、いや10分は経過してるかもしれない。

チエミが消えたほうからは物音ひとつしない。このままじゃチエミまで危険な目に遭ってしまうと考えた私は、隣で怯えているアヤの手を強く掴んだ。


「私たちも行こう……!」

どうやらアヤも同じ気持ちだったようで、私たちは一歩ずつ前へと歩きはじめた。