――桐島くん。



たしか二丁目の廃工場って、危険な場所として有名だったはず。

今にも崩れそうな建物の周りには立ち入り禁止のロープが張られているけれど、面白半分で出入りしてる人を見かけたことがある。

廃墟になる前の工場がどんなものを取り扱っていたのかは、錆び付いた外観からは予想もできない。

でも、なにやらヤバい薬品がそのまま棚の中に残っていると、噂で聞いた。


地元の人なら誰でも知っている廃工場は、町の外れにあるので人目につきにくい。

そんな場所をわざわざ指定してくるということは、土地勘がある人物の可能性が高くなってきた。


「どうするの?」

「い、行かないよ。っていうか怖くて行けないよ」

アヤは今にも泣き出しそうだった。


「でもこのままじゃずっと付け狙われるかもしれないし絶対に嫌がらせのメールも終わらないよ。もっとエスカレートするかもしれないし、早めに犯人を突き止めてガツンと言ったほうがいいかも」

怯えるアヤの背中を押したのはチエミだった。


私たちだけで行くことがどれだけ危ないことなのか全員が頭では理解していた。

でもアヤは警察に相談しても直接被害を受けたわけじゃないから事件にはできないと取り合ってもらえなかったらしいし、警察は頼りにできない。

そうなると、やっぱり自分たちでなんとかするしかない。


「私たちも一緒に行くから大丈夫だよ」

私はアヤの手を強く握った。続くようにしてチエミも大きく頷くと、アヤは覚悟を決めたように廃工場へと向かう決断をした。