「本当だ。見えないね。ケージに入れてるの?」
「ケージは可哀想かなって思って入れてないんだ」
「雑種?」
「うん。飼いはじめたばっかりだから、しつけもまだなんだよね」
「ひとり暮らしで犬飼うと婚期遅れるって聞くよ?」
「婚期ってまだ17だよ」
そんな会話をしている中で、ため息ばかりをはいているのはミスコンにも選ばれたことのある美人のアヤだ。
アヤは才色兼備で、学校でもマドンナ的存在。でも最近はずっと暗い顔ばかりをしていて、お弁当も全然手をつけていない。
「アヤ。大丈夫?」
私は心配になって問い掛けた。
「うん……」
返信は返ってきたけど、元気はない。元々、痩せていた体型がここ数日でもっと細くなり、顔もやつれてしまっている。
「ちゃんと眠れてるの?」
「ううん。夜中でも連絡が来るかもしれないし、桐島くんのことを考えると心配で心配で、ご飯も食べられないし、夜も眠れないの……っ」
顔を覆って泣きじゃくるアヤの背中を私はそっと擦った。
――桐島くん。
同じクラスの男子で、アヤの彼氏。
そして彼は……一週間前から行方不明になっている。