「相手がアヤだったら諦めもついた。でもセイコと桐島くんがどうこうなるなんて考えられない」
そう言ってエリカは無意識に自分の耳たぶを触った。これは動揺を落ち着かせたい時にエリカがする癖。
「……だからセイコを階段から……」
想像しただけで怖くなり、私は最後まで言い切ることができなかった。するとエリカは訴えかけるようにして私の腕を掴む。
「違うよ!たしかにセイコを追いかけたし桐島くんと仲良くしないでって伝えた。でも逆ギレされて言い争いになって……。それでセイコが歩道橋の階段から足を踏み外して落ちたのよ」
「………」
「し、信じてメイコ!本当だよ。でも私のせいにされるのが怖くて逃げちゃって……」
「スマホはなんで持って帰ったの?」
「桐島くんと今までどんなやり取りをしてたのか興味があったの。だって私は連絡先さえ知らないし、きっと名前すら覚えてもらってない」
エリカが声を詰まらせながら言った。
「……エリカも桐島くんのことが好きだったの?」
「うん。桐島くんはこんな私にも優しくしてくれた。だから憧れてたの。私は容姿も地味だし、セイコやアヤみたいに積極的にはなれなかったけど、心で想うだけなら自由だから……っ」
私はこれ以上エリカを責めることはできなかった。
セイコがどうなるかは分からないけれど、エリカの言葉を聞いたら言い争ったことなんて他の人には言えないと、私だけの心に閉まっておくことにした。



