――桐島くん。



場所は人気のない図書室。彼女は本を読むのが好きなので、いつも窓際のカウンター席に座りながら難しそうな本を読んでいる。

今日の彼女もまた本棚からたくさんの本を机に積み上げていたけれど、まるでそれを壁としているかのように姿勢を低くして、スマホを触っていた。


「メ、メイコ……」

〝エリカ〟は私の気配に気づいていなかったのだろう。背後から話しかけると、ビクッと驚いたように肩が上がった。


「どうしたの?珍しいね。図書室に来るなんて」

エリカは触っていたスマホを隠すように膝の上に置いた。だけど、蛍光ピンクのカバーがしてあるスマホはばっちと私の視界に入っていた。


「なんでエリカがセイコのスマホを持ってるの?」

おそらくエリカから香水の匂いがしたのはこれは理由だ。きっと今朝もスカートのポケットかどこかに入れていたのかもしれない。


「ひ、拾ったの」

「拾った?」

「え、あ、拾ったっていうか、昨日の帰りに机に置きっぱなしだったから危ないと思って私が預かってたのよ」

歯切れの悪いセイコに私は眉をひそめる。


エリカの言ってることは嘘だとすぐに分かった。

だってスマホ依存だと自分で言ってるセイコが机に置きっぱなしにするわけがないし、仮に忘れたとしても慌てて取りに戻るはず。


それに、こうして誰にも言わずにセイコのスマホを触り、明らかに中身を確認するように指をスクロールさせていた。