――桐島くん。



「隣町の大学病院だ。今も集中治療室に入っていて危険な状態らしい」

「……そんな……」

「面会はできないみたいだけど、みんなにはあまり大騒ぎしないで過ごしてほしいと思う。詳細が分かり次第すぐに報告するから」

先生はそう言って、クラスメイトたちの点呼を取りはじめた。ホームルームが終わったあとも教室では動揺が続いていて、セイコのことはすぐに他のクラスの人たちにも広まった。

……階段から落ちた?危険な状態?

頭では理解していても心が追い付かない。そんな呆然とする私の元へチエミがやって来た。


「セイコならきっと大丈夫だよ」

言葉では前向きなことを言うチエミも心配そうに瞳を潤ませていて、私は不安を共有するようにチエミの手を握る。

すると、続くようにしてアヤとエリカも傍に寄ってきた。


「……もう、本当に嫌だ。なんでこんなに災難ばっかり起きるのよ」

アヤは桐島くんのことも含めて、さらに精神的に参っているように見えた。


「どうにか面会できないのかな。顔は見られなくてもせめて近くで………」

「無理だと思うよ。集中治療室にいるってことは多分、家族以外の一般の人は出入りすらできないと思う」

憤(いきどお)るチエミに対して、エリカはとても冷静に言った。


……あれ。

3人の会話を聞きながら、私はあることに気づく。
  
それは何故か〝ある人物〟からセイコの香水の匂いが強くしたからだ。


セイコは教室でも周りを気にせずに香水をつけていたし、私も制服に匂いが染み付いてしまったことはある。

けれど、あんなに毛嫌いしていた彼女から、匂いがするなんてありえないし、おかしい。


「ねえ、ちょっと話せる?」

私はタイミングを見計らって声をかけた。