そうこう言っているうちに、私の家の前まで来たが、スルーして隣の空の家のケーキ屋さんに入る。



1階はお店と厨房があって、2・3階は住居という、豪華な造りだ。


小さい子どもからお年寄りまで、街のみんなに愛されているようなお店なのだ。







カランカラン〜




両開きの扉の片方を開けると、ベルが心地よい音を奏でた。







「いらっしゃいませ〜……って海美ちゃんかぁ、いらっしゃい!

焼き菓子でしょ?空の部屋に持っていったから、好きなのを持ってっていいよ!」


「ちょ、ちょっとお母さん!!また僕の部屋に置いたのー?部屋に甘い匂いが染み付くから、やめてよぉ…」


「ケーキ屋の息子なんだから、もう諦めなさいよ!あははははっ」





空と話をしていたこの女性は、空のお母さんだ。

快活で優しくて、料理やお菓子作りが上手な素敵なお母さんなのだ。








「おじゃましまーす!」

勝手知ったる私は、レジ横の階段から2階へ上がっていった。


空が後ろから「ちょっと待ってよ、うみちゃん〜!」と言っているのを聞かずに。