昼休み。

合唱コン委員の人に、別の用事があって先生に呼ばれていると言われ、曲名や指揮者、伴奏者の名前などを書いた紙を託された。

有紗も同様に先生に呼ばれているので、今は1人だ。音楽の先生に提出すれば良いので、職員室へ向かっている。


空き教室から、ピアノの音がする。

なんていったっけ……家具のCMで流れてたやつ……
(ちなみに、ドビュッシーのアラベスク第1番をイメージしてます)


まぁとりあえず、紙を提出しなければ!

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再び空き教室の前を通るが、やはりピアノの音が聞こえる。

引き戸の隙間を見つけ、そっと覗いてみた。





ピアノを弾いていたのは空だった。

カーテンが引かれた薄暗い室内のなかで、隙間から零れた光がちょうど空とピアノを照らしていて、スポットライトみたいだ。

……なにより、上手い。

鍵盤の上を滑らかに指が踊り、澄んだ音が反響している。

ポーン……と最後の音が響き、消えたとき。

扉に体重を乗せすぎていたようで、ガタン!!と扉が外れた。もう1枚の扉がストッパーになるかたちで外れたので、扉ごと倒れることにならずに済んだ。

しかし、扉が外れたときの大きな音で空もこちらに気づいて、びっくりした様子でこちらを見ている。