朝の通学路。


なんとか10分で準備を終わらせたので、ゆっくり歩きながら登校できる。



空に、弁当・水筒などをリュックに入れてもらいながら、私は朝ごはんのクロワッサンを頬張る。


「はい、全部入れたよ。」

「あいあおー(ありがとう)」



空は私の顔を覗き込み、クスッと笑った。

「うみちゃん、ついてるよ。」


そう言って、私の口元に手を伸ばし、クロワッサンの欠片をつまんだ。




ーーーそして、それを口に入れた。




「うん、おいしいね!これ、どこのパン屋さん?」



「え…っと、隣町の新しく出来たところだって。」


「へぇ〜、今度行ってみようかなー」



こ、こいつ、無自覚なのか……?


私の幼なじみ清水空(しみず そら)は、私よりも2つ年下で、今年の4月に私が通う高校へ入学したのだ。


つまり、私は今年高3。

朝から寝坊をして慌てるのも、3年目(小学校から数えるともっとある)なのだ。


今日から6月。周りはみんな半袖で、夏の訪れを感じる。





「そういえば空、合唱コンは何するの?」



うちの学校は行事がひたすら多い。

校内合唱コンクールをする高校は珍しいらしい。ちなみに、6月の最後の週に行われるので、練習期間は相当短い。




「僕は伴奏だよー」



「はぁ!?まじで?すごいじゃん!」



「えへへ、頑張るねぇ〜」




空はうちのお隣さんで、家はケーキ屋をしている。

空のお母さんの趣味がピアノなので、空も弾けるのだ。かなり上手い。