父は一旦僕を部屋の外へ連れ出した。

「空、海美ちゃんをつがいとして認めたんだな?」

僕はその言葉に頷いて肯定した。



「さっきはよく考えずに母さんと送り出してごめんな。海美ちゃんが泣いてるのを見て、考え直したんだ。

俺たち家族は獣人だ。わかるな?でも、海美ちゃんやその家族は普通の人間だ。人間にはつがいという感覚がないから、獣人が人間をつがいとして認めてしまうと、時々大変なことになるんだ。」

「たいへんなこと……?」

「あぁ。獣人が、つがいの人間の意思を無視して無理やりつがってしまう事だ。つがいは、獣人にとって唯一無二の存在だし、1番の幸福でもある。だから、抑えが効かなくなるんだ。」

「僕も、うみちゃんに酷いことしちゃうの……?」

「今のままだとな。だから空、約束してくれ。大きくなって、海美ちゃんとお互いに好きだという状況になってから、海美ちゃんにつがいのことを教えるんだ。」

「大きく、って何歳くらい?」

「……早くても高校生かな」

「長いよ……」

じわじわと涙が目尻に溜まる。

「空。これは人間である海美ちゃんのためでもあるんだ。海美ちゃんにつがいは見つけられないから、他の男に恋をする権利があるんだ。」

「そんな……!!いやだよ、うみちゃんが他の男となんて……」

「なんだ、空は自信がないのか?海美ちゃんが空を好きになれば大丈夫だろ?」

「…………うん、頑張る。」







こんな感じで納得してしまった僕は、長年海美ちゃんに片想いをしている。

…………海美ちゃんに悪い虫がつかないようにしてたのは咎めないでほしい。