自宅のドアを開けると、開店準備をしていた両親がびっくりしていた。

「空、海美ちゃんと公園で遊んでくるんじゃなかったの?」

「そうだったけど……見つけた!!」


両親は数秒固まって、察したらしい。
今朝のことがあってすぐのことだ。

「空、大事にするんだぞ!」

父に返事をして、うみちゃんを3階の自分の部屋まで引っ張っていった。




「ちょ、空!?どういうこと!?」

「とりあえず来て!」

うみちゃんは終始困惑していた。






ドタバタと階段を駆け上がり、自分の部屋にうみちゃんを連れ込んでカーペットになだれ込んだ。

「ちょっと、空!?どういうことかちゃんと説明してよ!」

「うん、そうだねー」


僕はその時本当につがい(うみちゃん)に夢中になっていて、うみちゃんが言ったことを聞き流して生返事をした。

当時僕よりもっと背が高かったうみちゃんが尻もちをついたのを後ろから抱き込み、逃げられないようにした。





「うみちゃん、僕はうみちゃんのこと大好きだよ。うみちゃんは、僕のこと好き?」


「えっ……」


どんどん耳が赤くなっていくのが見えた。

うみちゃんの後ろにいるので顔は見えないが、きっと耳くらい真っ赤になっているのだと分かって仄暗い悦びが沸き起こる。





かぷっ




真っ赤になった耳を甘噛みしてみた。

「ひゃっ」とか細い悲鳴を上げたうみちゃんが可愛くて仕方ない。



そのまましばらくの間、感情の赴くままにがぶがぶとうみちゃんの耳をいじめ続けた。

……うみちゃんのお腹に回していた腕に水が落ちてきた。




その水は、うみちゃんの目から落ちたものだった。

その水によって我を取り戻し、急いで拘束を解き、うみちゃんの涙を拭った。



「……ぐすっ……うっ、そら、こわいよぉ…………」



衝撃だった。



つがいからの否定の言葉は、一撃で心に突き刺さる。そして、彼女の意思を確認せず、呼びかけを無視し、自分の獣人としての本能のままに傷つけようとしていた自分自身に激しい嫌悪を抱いた。