【空side】

隣りに腰を下ろして僕にパウンドケーキを押し付け、フィナンシェを食べ始めた海美ちゃんを見て、そっとため息をついた。

(部屋に2人きりなのにベッドに座るなんて……良く言えば、僕は信頼されているのかな)

ちらっと隣りを見遣ると、海美ちゃんは美味しそうにニコニコしながらフィナンシェを頬張っている。……が、食べるのに夢中になって口の端に欠片がついている。

「うみちゃん、ついてるよ」

「え?どこ?」

「ほら、取ってあげるからこっち向いて。」


海美ちゃんの口もとの欠片をつまみ、それをそのまま自分の口に入れてみた。
飽きるほど食べた味なのに、とても甘く感じた。

「ちょっと、空っ!」

耳まで真っ赤になった彼女を見て、少し驚いた。

(少しは、意識してくれてるのかな?……って言うのは言い過ぎか……)




思えば、空の片想いは数年に及ぶ。
《小さい頃から仲が良いお隣さん》から《ずっと好きな女の子》に変わった時のことは、未だに忘れられないーーーーー