「あはは! 悪戯しただけー!」
逃げるように走っていく朔夜さん。
お風呂は、いいのだろうか。
少し気になることがあった。
朔夜さんの唇や舌。
それとは別の感触。
歯、というより。牙のような感じがした。
自分の口に手をやる。
変化はしていても、どうしても犬歯だけは狐の時のように鋭いままだから。
「でも、なんで急に……」
ぐるぐると何かが私のなかで渦巻く。
分からないのが苦しい。
「熱い……」
朔夜さんが触れたところが全て。
初めて、男の人にこんなことされた。
男の人となんて関わったことない。
お父さんか、あの銀髪の兄弟だった。
それくらい、私は関わらなかった。
「どうすればいいの……?」
わからない。全てわからない。
朔夜さんは協力してくれるんじゃないの?
だから、私を引き取ったんじゃないの?
だから、探し物をしていいと。
言ったのではないの?
「全部、私の思い上がり?」

