【蒼兎side】




『お別れしなきゃいけないのは、私だから?』




そう聞かれたとき、心臓が止まるかと思った。




言えるわけない。
だって、朱里の言う通りだから。




僕がお別れを望むのは、朱里だから。
僕が、罪悪感に苛まれた、あの悪夢に巻き込まれてしまった僕達の恩人の娘だから。




朱里に真っ直ぐとした目を向けられる。
それに胸が締め付けられる。




ごめん、朱里。
僕のせいで。




何かを言うにも声が出せない。




辛い。きっと、朱里が辛くなる。




朱里が、辛い?




「朱里、僕は……」




その事を考えると頭が痛くなる。
だから、考えることをやめた。




口ごもる僕を朱里はじっと待ってくれる。




真っ直ぐと。




僕を澄んだ瞳で見つめている。
その瞳が僕をどれだけ迷わせるか。




正直に言えば出ていってほしくない。
兄さんの家にもいってほしくない。




僕の、傍にだけいてほしい。