朱里も最初は遠慮していたけれど、いざ町についたら目を輝かせてキョロキョロしていた。
おまけに、人間に憧れるようなことを言われた。
今の僕には、それが、とても心に刺さった。
朱里は知らない。里が襲撃された理由を。
あれは僕が人間に不信感を抱かせたから。
朱里、君は人間が怖くないのか?
寂しくはないか?
泣いているところを僕は一度しか見ていない。
辛いはずなのに。
「朱里、楽しい?」
「うん! 食べ物は美味しいし!」
嬉しそうに兄さんにかってもらった団子を頬張っている。もぐもぐしながらまた周りをキョロキョロ。
「やっぱり、可愛いね」
「え!?」
「ほら、醤油煎餅だって」
「ほんと!? 食べたい食べたい!」
「食いしん坊だね朱里は」
「美味しいんだもん! 仕方ないよ!」
兄さんに駆け寄って醤油煎餅をせがんでいる朱里。兄さんも甘いからすぐにお金を渡してしまう。
苦労して働いたお金なのに、昨日だってあんなに食材を僕にくれた。
兄さんは、優しいから。

