兄さんと僕は別々に暮らした。
兄さんは町の近くに、僕は山の中に。
もう誰にも迷惑をかけることがないように。誰も僕のせいで犠牲にならないように。
そんな暮らしから一年が経ったとき、僕は外にでた。雪が降っていたんだ。
雪は好きだった。桜さんの色だったから。
そりゃ雅さんも大好きだったけど。
雪が積もっていて、久しぶりに外に出歩く気になった。ずっと外に出ていなくて引きこもり気味だったから。
そして、朱里に出会ったんだ。
『まぁ、お前が雅さんの娘拾ってたときは驚いたけどよ』
『うん、僕も驚いた、でもあんな風に倒れてたってことはきっと』
里が襲撃されたってことだろう。
『蒼兎まだあの事を気にしてるのか』
『あれは僕のせいだもの。それは紛れもない事実』
『朱里ちゃん、どうすんだ』
『面倒はみるよ。元気になるまで』
『元気になるまで、ね……』
『僕といればきっとあの子も不幸になる』
きっとそうだ。僕は弱いから、守れない。
しばらくすると朱里が起きてきて、兄さんにお菓子をだしてくれた。
しかも兄さんは町に行くなんていいだした。勝手に僕の提案だなんていって。

