『いいんだ兄さん』




『お前一人で背負う必要はどこにもないだろ!』




あの日、僕は集落に覗きに行ったんだ。里の外が知りたくて。人間を見てみたくて。




でも、それがいけなかった。




僕は昔から臆病で、変化が苦手だった。




驚いたらすぐ耳と尻尾は出るし、しまいには狐になってしまったりする。




馬鹿だった。僕みたいな奴が行ったら、あぁなるってわかっていたのに。




それなのに、ちょっとの好奇心で、皆を……。




集落に出た僕は簡単に人間に見つかった。




まだ12才だった僕には何も出来なかった。
とても怪しまれて、それが怖くて。




変化は、解けてしまったんだ。




人間は悲鳴をあげて僕を追い返した。




辛くて、怖くて里まで走ったんだ。里に帰ったら桜さんが慰めてくれた。




僕が全部悪いのに、僕は悪くないと。




それから4年たって、僕と兄さんは里からも集落からも離れたところで暮らすことにした。