家の後ろ盾どころか、両親にすら愛されていないのに。


お兄ちゃんに愛されていても、それは弦刃を守るための強みにならない。


それでも、好きだった。


ずっと、好きだったんだ。


だから、想いを伝え続けた。


あんなお金で解決するような返し方をされるのなら、恋人なんてならない方が、互いのためだったのかもしれない。


弦刃からしたら、きっと……。


「離れんな、歩」


「……」


「俺が悪かった。何も、気づいてやれなかった」


後ろから抱きしめられて、身動き出来なくて。


「何がっ?」


声が震えた。


情けない。こういうところが、弦刃に釣り合わない……。


彼はいつだって、真っ直ぐで。


そういう凛とした姿が、とても好きなの。


好きになったの。


愛さずには、いられなかったのよ。


「お前が、何を望んでいるのか……俺には何が正解なのか、わからん」


弱々しい声は、震えていた。


「それでも、お前が好きだ」


「……」


伝えられた、その一言。


聞きたくて、欲しくて、仕方なかった言葉。


「お前が好きだと言ってくれる度、俺は言えなかった。家のこともあったし、俺は……あの女の血は、繋げたくなかったんだ」


ずっと、子供の話をする度にはぐらかされた。


知ってる。


弦刃がずっと、実のお母さんを許せてないことは。