その場にいる全員の背中が、ぶるっと一瞬震え上がる

何この声・・・・・・

恐る恐る、後ろを見ると

見覚えのある、濃ゆいピンクツインテが遠くに見えた

声の主は、あたしたちのいる廊下の端───あたしたちがいま上がろうとしている階段も端にあって、この階段の逆側の端────にいた

この距離で・・・・・・声が届くのかよ

「ねぇ、あたしと一緒に回ろぉ?」

人目もはばからず、たったっと走ってくる

・・・・・・腕の振り方が正直言って気になる

そいつ・・・・・・確か名前は、クラスメイトで入学式の時にしつこく零に絡んできた、佐藤まり

佐藤まりは、その独特な喋り方と女の子らしい仕草(?)、そしてその容姿から・・・・・・男子から人気がある、らしい

まあ、それでも千聖と春には劣るらしいが

何故こんなことを知っているのか・・・・・・つっても、廊下で生徒が話してたやつを盗み聞きしただけだ

まあ要するに、ぶりっ子なわけで

女子からは嫌われてる・・・・・・らしい

全部「らしい」からな

飽くまでも噂

だったが・・・・・・今日ので確信した

某人食い巨人の漫画に出てくる奇行種かよって感じの、手の振り方と比喩しておこう

あたし達の方まできて、がしっと零の腕を掴んで引き寄せた

零本人は嫌そうだけど

「は?回らねぇよ。班違ぇだろ」

「えぇ~。まり、零くんが居なくて寂しかったの!こんな子達やめて、あたしと一緒に回ろうよぉ~」

こんな子達、ねぇ

ちらっと千聖たちをみると、こめかみの辺りがぴくぴく動いている

表情こそ笑顔だが