壇上のサイドに設けられた、パイプ椅子の列──要するに、教師が座るところ───に帰って行った

にしても、長かったな

「それでは、新入生代表挨拶です。入試試験首席、零さん。前に出てください」

は?

今、ものすごく身近にいるやつの名前が呼ばれたような気がするが

気のせいか?

「あっ、やっぱり零が首席じゃん」

「だりぃ」

「んな事言わずに、さっさと上がった上がった」

春が、めんどくさそうに口をとがらせる零を窘めて、促した

依然不機嫌そうだが、諦めた様子で壇上にあがっていく

「気候も暖かくなり、春の芽吹きを感じるようになりました───」

無表情で、挨拶を続ける零

・・・・・・女子の目がハートだな。さすが容姿端麗なやつめ

「勉学に励み、部活に励み、1度きりの学校生活を堪能し・・・・・・」

即席で考えたのかは知らないが、かなりまとまった文章になっている

すげぇな

「───新入生代表、首席零」

ぱちぱちと拍手が起こる

当の本人は、相変わらずの無表情だが



後で聞いた話だが


あの挨拶は入学式で名前を呼ばれるまで存在すら知らなかったらしく


あの挨拶は即席で作ったものだと判明した