外に出るのは本当に久しぶりだった。太陽の光が眩しく、お世辞にも快適さとはほど遠い。ここのところずっとエアコンで空調整備された部屋の中ばかりにいた私には正直、堪える。

 陸から上がった魚ってこんな感じ?

 息も苦しくて、すぐに肌に汗が滲む。暑さに目眩を起こしそうで体が全身で不快感を訴える。でも今はそれでいい。自分を痛めつけるために外の出てきたようなものだ。

 乱暴なやり方なのは百も承知している。でも暗闇に思考を覆われるくらいなら、まだこっちがマシだ。嫌でも実感できる。

 私はまだ、生きているんだ。

 ゆっくりと深呼吸をして改めて前を向いた。

 意気込んで家から飛び出たのはいいけれど、どこに向かえばいいのか。悩みつつ、とりあえず目的もなく足を動かす。

 私の家は高台の住宅街、月見ケ丘(つきみがおか)ニュータウンにあり、私が幼稚園のときに建てられた一戸建ては築十年ほどだ。

 改めて見ると真っ白だった家の外壁はわずかに黒ずんでいる。まぁ、そこまで気にはならない。

 とはいえ、ここ数年のうちに建てられた家と比べるとそれなりの年月を感じさせる。後ろにあった山を削ってさらに土地を作り、そこに小さい子どものいる家族や若い夫婦が家を建て、この辺りもよりいっそう賑わっていた。

 休日や放課後になると子どもたちの楽しそうな声が聞こえ、癒されるときもあれば煩いと思うときもあった。

 それも懐かしい思い出だ。時期的にいえば今は夏休みにあたるのに、この住宅街では子どもの声はおろか人の気配さえあまり感じない。