荷台に乗っている私たちを考慮してか、宮脇さんはわりとゆっくりと走ってくれた。それでも暗い山道を軽トラの荷台で、というのはなかなかスリリングだ。

 ひたすら山道を走り続けてでこぼこな道を登っていくと、木々の合間から白いドームのような建物が顔を覗かせる。あれが西牧天文台だ。

 夜でも外観は目立ち、徐々に全貌が現れる様は期待感を膨らませていく。そして開けたところに車が出ると、天文台は目前だった。想像していたよりもずっと大きい。

 車が停まったのを受け、ほっと胸を撫で下ろすと、降りてきた宮脇さんが行きと同じようにあおりを倒してくれたので、私はゆっくりと地に足をつけた。

 車酔い知らずの私だったが、今回ばかりは『車に酔う』という感覚を初めて味わった気がする。平衡感覚がおかしくてふらつくところを穂高が支えてくれた。

「大丈夫か?」

 私は大きく息を吐いて足に力を入れる。

「うん。なかなかできない体験をさせてもらったね」

「お前ら、帰りはどうするんだよ。本当にここで夜を越すのか?」

 談笑を遮った宮脇さんの質問には、穂高が答える。

「一応、そのつもりです。ここの管理者さんに話はつけていますから」

「迎えが必要なら、適当な時間に来てやるぞ」

「でも」

 宮脇さんは軽く手を振って鬱陶しそうな顔をする。

「俺はお前らのことなんてどうでもいいんだけどよ、ほかの連中がうるせぇんだ。健二とか、意外と谷口さんもな。あの女医さんは、家に連れて来いって何度も言ってくるし……」

 みんなにあれこれ詰め寄られている宮脇さんを想像し、本人には申し訳ないがなんだか微笑ましく感じた。

 穂高も同じように思ったのか、笑みを浮かべたままだ。そしてゆるやかに返事をする。