~甘い香りに誘われて~三度目の涙

先輩のお店に来ると…何故かワクワクしてしまう。

何で?

分からない。


スイーツを見るたび、膨らむ私の夢…。
いつか…私もこんなお店で…可愛いスイーツを作りたい
そう…夢が成長しつつある。

今朝、母は涙を流してまで私を思っていてくれた。
母も父のあの性格上…逆らえずにいたんだ。
母は私の夢を…受け止めてくれた。
それが何より嬉しかった。

もう少し…私に勇気があれば…そう思った。


「この歳でこんな事が出来て…良いですね…。」
「俺が勝手にしてるコトだよ。…こんなこと、親が許す
 はずないよ…。」

親を押しきってまでチャレンジしようとする行動力に
私は驚いた。
親がダメと言えばダメで…。
親の言うことは当たり前…それが普通だと思っていた。

「反対…されたのに…?」
「自分の人生なんだ。…そう簡単には諦めれない夢でも
 あったからね…。」

簡単には…諦めれない夢…。
だから…親を押しきってまで…反抗するの?

それとも…今まで反抗をしたことがないから…分からないだけ?

私と…他の人って…生き方と…暮らし方が…違うの?
今まで疑問に思わなかった。これが…普通…そう思って
いたから…。

「親に決められた人生なんて嫌だからね…。」
「……。私は…どんなに叶えたい夢があっても…どんなに
 やりたい事があっても…出来ない方が多かった…。」
「?」

私にとって…やりたい事や、夢は…ただの願望…。
努力しても…手を伸ばしても…決してとどく事のないモノ。
それが今までの私。
これが私の人生で…生き方。
皆と違う…先輩の話を聞いて、ようやく分かった。

「私…父が厳しくて…。いずれ、病院を継がなければ
 いけないんです…。」

こんな…暗い話をするためにここに来たんじゃない…。
私は席を立った。

「舞唯華ちゃん…?」
「私…帰ります…。」

心の中が…モヤモヤしていた。

何で?

どうして?


私は小走りで店をあとにした。

親を押しきる勇気が…先輩にはあった。
だから…今ああやって自分の夢を追いかける事が出来てる。

羨ましい…そう思ったのか?

正直私にもわからなかった。
それぐらい…モヤモヤしていた。