~甘い香りに誘われて~三度目の涙

「ね…ねぇ!お母さん…。」

自分から話しかけるのは…久々だった。
母も驚いた顔をしていた。
お父さんの居ないこの時間なら言える!…そう思った。

「わ…私!…医者になんて…なりたくない!…。
 わ…私は……パティシエールになりたいの!」

今まで自分の意見をまともに言ったことのない私にとって大きなコトをやりとげた…感じだった。
ても…母は驚いていなかった。
むしろ、穏やかに笑っていた。

「やっと…自分の気持ちを打ち明けてくれた…。
 今まで貴方に…苦しい思いをさせてたからでしょ?」
「え……。」

母は私の手をとってうつむいた…。

私は今まで…完璧主義の父に縛られて生きてきた。
今も…そして、きっとこれからも…。
私に自由は無い…そう思って生きてきた…。