訳が分からないけど、切羽詰った様子の兄貴の言葉に従うべきだと思い、小走りで家へと向かう。

一緒に暮らし始めたのに、最近はほとんど家にいなかった兄貴。

父さんもよく夜中に出かけていたし、母さんは父さんが出かけた日は必ず救急箱の中身を確認してた。

父さんも兄貴も裏に関わってる人たちだから、深くは気にしてなかったんだけど‥‥。


そんなことを考えていたら家に着いた。
鍵を開けて、リビングに向かう。

くつろいでいる父さんを見つけた時、父さんもまた俺の存在に気が付き振り向いた。




「おかえり。
随分と早い帰りだな。
凛音の話を聞きに行ってたんじゃないのか?」


『そうなんだけど‥‥』




言葉を濁した俺に、何かを察したのか父さんの纏う空気がピリっと張り詰める。





「何があった?」


『barで話してたら、傷だらけの兄貴が飛び込んできたんだ。』


「‥‥澪?」


『蘭音さんがここに来てないか‥‥って。』


「‥‥何か伝言はなかったか?」