─────あの日は確か、午後から雨が降り出した日だった。


「はあ、最悪……」

傘を持ってきてなかった俺は、小雨のうちに早く帰ろうと思っていたのに、最悪なことに2年の女子に捕まってしまった。


くそっ、土砂降りじゃねーかよ……


やっと解放され、帰ろうと廊下の窓から外を見れば、雨がザーザーと音をたてていて。


外は暗いし、自分の心もどんよりで。


黙って流す方がめんどくさいと思っていたけど、実際はヘラヘラしてる方が疲れるな……


はあ……とまた、深くため息をつきながら、教室のドアを開けようとしたとき。


「………っ、」


ん?

なんだ?


ドアが閉まった状態の教室から聞こえた声。


もう時間も遅いし、外はひどいことになってんのに、こんな時間まで何して……



見れば1人で窓の外を見つめて立っている女の子。


そう、それが……莉世、だった。